「歪み」測定に関する考察

「歪み」はオーディオ機器にとって重要な特性の一つで、スピーカー、アンプ等のオーディオ製品の仕様書に必ず記載されています。しかし、用語が誤って使われたり、重要となる追加すべき情報が省かれていることがよくあります。本ニュースでは歪みの概念と測定方法、そしてそれらの適切な応用について明らかにしていきます。

第一に、全ての歪みが悪く好ましくないということではありません。例えば真空管アンプの多くはソフトディストーションを発生すると言われます。トランジスタアンプとは異なり、真空管アンプは主に基本周波数と密接に関連する偶数次高調波で構成される歪みを発生します。この歪みは人の耳に好ましく聴こえます。

その一方、音声や音楽のレコーディングとそれらを可能な限り忠実に再生する場合、歪みはいつでも好ましくないものとなります。この好ましくない歪みを分類し、測定する方法を以下で論じます。

線形歪みvs.非線形歪み
線形歪みとは、新たな周波数が加わることなく振幅や位相が変化した歪みを言います。

非直線性歪みとは、新たな周波数成分が発生した歪みを言います。通常「歪み」と言った場合、非直線性歪みを意味します。

play original signal       play linear distorted signal       play non-linear distorted signal

高調波vs. 非高調波歪み
非線形歪みは、さらに高調波、非高調波歪みに分類されます。高調波歪みは、基本周波数の全ての整数倍成分から算出されます。これはTHD (Total Harmonic Distortion)と呼ばれ、伝統的な歪み測定です。一部の測定アプリケーションでは、特定の高調波成分から算出されます。非高調波歪みは、IMD(相互変調歪み)のように基本周波数の倍数成分ではありません。

Flexus FX100 THD Spectrum

Harmonic Distortion Spectrum

THD(全高調波歪み)vs. IMD(相互変調歪み)

THD(全高調波歪み)は多くの測定器に装備されており、簡単に測定できます。測定レンジが狭い場合に大きな欠点があり、高い周波数のテスト信号の高調波成分が測定レンジ外になってしまいます。正確な測定値を得るには、測定周波数レンジの広い測定器を使用するか、IMDを測定する必要があります。 IMD測定は、テスト信号として独立した周波数と増幅度を持つ二つ以上の正弦波を使用します。非直線性歪みにより、これらの入力信号周波数の倍数の和と差成分が生じます。したがって、歪み成分は解析する帯域幅全体に分布します。

測定単位と算出方法
歪みはほとんどの場合、信号レベルと歪みの比で表されます。単位は通常パーセンテージ(%)かデシベル(dB)が使われます。テスト信号はオーディオ信号(電気信号)か音響信号(空気振動)が入力されます。

THDを計算するには二つの方法があります。主にアメリカで使われるTHD IEEEは、基本形周波数と歪み成分の比で計算されます。IECに準拠するTHDは、アメリカ以外のほとんどの国で使われる一般的な方法で、基本周波数と歪み成分の合計と歪み成分の比で計算されます。測定器の種類により、ノイズ成分が加算されたTHD + N(ノイズ)で表されます。いかなる場合にも、測定結果に大きく影響を与える解析周波数レンジを明らかにしておく必要があります。

IMD測定では、主に三つの方法が使われます。IEC60268/3に準拠したMOD法は、周波数と増幅度が選択できる二つのトーンを使用します。そして、2~5次高調波の相互変調成分が測定されます。DFD (Difference Frequency Distortion)とCCIF法は似た方法で、増幅度が同じ互いに近接した二つの周波数を使用します。一般的にアンプ測定で使われるDIM (Dynamic Intermodulation)法は、一つの方形波信号と追加の一つの変調周波数を使用します。
 

Flexus FX100 IMD Spectrum

DFD (Difference Frequency Distortion) Spectrum

使用する測定器について
旧式の測定システムでは、ほとんどの場合、歪み測定がTHD+Nに限られてしまいます。現代のオーディオ測定には、広範囲な歪み測定ファンクションを装備し、同時に多チャンネル測定、広帯域測定、高速信号処理を実現するFX100オーディオアナライザをお勧めします。付属のFX-Control PCソフトウェアを使用することで、規格化されたあらゆるタイプの歪み測定が高精度で素早く簡単に可能になります。

お問い合わせはこちら
FX100オーディオアナライザについて詳しくはこちら