2021年 3月 10日

オーディオシステムのレイテンシ

オーディオシステムで発生するレイテンシ(遅延時間)とは、信号がシステムに入力されてから信号または実際の音として出力されるまでの時間差のことです。このようなディレイは、アプリケーションにより様々な影響を引き起こします。通常レイテンシは小さいほど良いとされますが、レイテンシを意識的に利用するアプリケーションもあります。本記事はレイテンシについて要約し、オーディオシステムでレイテンシを測定する方法について解説します。


XL View
Web会議中に発生するレイテンシ

Web会議は、ビジネスの場で日常的に使用されるようになりました。そのため、多くの人々がWeb会議中に音声通信が遅れ、参加者同士でお互いの話をかぶせてしまうという問題を経験しています。これにはコミュニケーションが取りにくくなると同時にいら立たしさを感じるでしょう。

オーディオシステムにおけるレイテンシの要因と影響について

レイテンシには主に三つの要因があります。

一つ目は、例えば「Web会議」で送信されたデータのバッファリングによりディレイが発生する場合です。エラー補正アルゴリズムもその一因となります。これによりレイテンシが数秒間発生することがあります。

二つ目は、音の物理的な伝送経路で主に空気を伝搬する時間が要因となります。例えば大規模なイベントでは、スピーカーから数百メートル離れた観客に音が空気の振動として伝搬する際、少なからず時間がかかると同時にサウンドレベルが大幅に低下します。この低下したサウンドレベルを補うため、いわゆるディレイスピーカーを観客席の後ろに追加します。音楽信号がステージ横のメインスピーカーとディレイスピーカーへ同時に送られた場合、後方の観客は最初にディレイスピーカー、そして遅れてメインスピーカーから音が聞こえます。その結果、観客はディレイスピーカーを音源と感じてしまい本来あるべきステージを認識できません。そのため、ディレイスピーカーにはディレイのかけられた信号が送られます。必要とされるディレイタイムは、簡単に言えばメインスピーカーからディレイスピーカーに音が伝わる時間になります。 (測定ノウハウのハース効果も参照してください。)

三つ目は、A/D、D/A変換、様々なアルゴリズムによるエフェクト、エラー補正などデジタル信号処理で発生するレイテンシです。アプリケーションによっては、レイテンシの許容値が規定されています。例えば映画をワイヤレスヘッドホンで鑑賞する場合、人によっては150 msから200 msのレイテンシが気になることがあります。この場合、人が対話する場面では口の動きが一致していないと感じます。

デジタルインイヤーモニター(IEM)においては、要求事項がさらに厳しくなります。ミュージシャンは、自分の歌声を頭蓋骨経由で間接的に聞いています。さらに、歌声はインイヤーモニターからも聞こえます。ここで許容されるレイテンシは、ほんのわずか数ミリ秒です。

レイテンシの測定方法

音響的なディレイタイムやスピーカー間の距離を測定する場合は、XL2オーディオ&アコースティックアナライザMR-PROオーディオ信号発生器の組み合わせが適しています。これにより、ディレイスピーカーに適用されるディレイタイムを素早く正確に測定できます。

電気音響システムのレイテンシ、アルゴリズムによるエフェクトで発生するレイテンシ、またオーディオ伝送チャンネル間ディレイは FX100オーディオアナライザで測定できます。測定に必要なテスト信号は、本体ジェネレータに内蔵されています。